汚れとは・・・ 

汚れとは「あるべき場所でないところについている物質」

  1. 人体から分泌されたり、排泄されるもの
  2. 外的な生活環境からくるもの
1.人体からの汚れ

1)皮脂 

皮脂とは皮脂腺から分泌され、皮膚表面に脂肪膜を作って皮膚を保護する役割をするモノで、人体にとっては大切なモノである。

しかし衣服につく汚れとしてみた場合、衿や袖口、靴下などで最も頑固な汚れの原因となり、十分洗い落とすことは非常に難しいとされている

皮脂は色々な種類のあぶらの成分を含んでいるが、皮下脂肪と同じ中性脂肪(32,5%)と石けんの構成成分である脂肪酸(30%)とで大半を占めている
*「油」はてんぷら油、オリーブ油のように室温で液体であるもの
 「脂」は、肉のあぶらのように室温で固体であるもの

皮脂の分泌量は平均して1日約14mg(季節、体の部位で違う)で、夏より冬に多く、首や背中の部位に多く分泌される。
全体的に男性より女性に多い。

皮脂汚れの最も大きな問題点は「黄ばみの原因となる」
皮脂汚れはそのまま何日も経過すると繊維内に入り込んだ後、脂質の成分が空気中で酸化されて着色物質に変化するため、布が黄ばんでくる(黄色化)。
また、洗っていても完全に落ちていないときは同じことが起こる。

「皮脂は他の汚れのボンド役をする」
特に困るのがこのことで、衿垢や袖口の汚れが特に落ちにくいのは、皮脂に皮膚の垢や空気中のちりやほこりがしっかりとはりついてしまうからである。

2)汗

汗そのモノは無色透明で無臭のモノである。
汗のついた衣服が黄ばんでくることは誰しも経験している。
これは汗と一緒に分泌された皮脂の中の脂質成分が空気中の酸素によって酸化され黄色の着色物質に変化するためである。

汗が汗臭くなって時間がたつにつれてひどくなる原因は、汗が皮膚表面の細菌によって分解され、悪臭を放つような物質に変わるためである。

「汗は繊維全体にダメージを与えるようになる」
汗をそのままにしておくと、汗に含まれている窒素化合物が皮膚表面の細菌によってアルカリ性のアンモニア化合物に変化して、繊維全体をもろくする。
特にアルカリ性に弱いたんぱく繊維(特に絹)に与える影響が大きい。汗には酸性の汗や塩分酸化酵素などを含んでるため、ほかのモノを酸化しやすく、染料を退色させて色物が色あせることも起こる。

汗は尿とほとんど同じ成分を含んでいるがかなり薄いので、水分を大く含んだそのままの状態ではあまり問題にならないが、水分が蒸発すると、「酸」「アルカリ」「塩」の影響がそのままでる

*汗は「曲者」であることを忘れてはならない

3)垢

人体の表面の一番外の層は、新陳代謝によって角質化する。
これは死んだ細胞なので次第にはがれていくが、このはがれた表皮に汗と皮脂それに空気中のちりやほこりがくっついて「垢」となる

洗濯機で洗ってもよく残ってしまう衿や袖口の汚れの正体がこれである。 外からのちりやほこりに色がついているため余計に目立つようになり、厄介な汚れである。

4)血液

血液も洗い方を間違えると非常にとれにくくなる。
これは、たんぱく質、脂質、糖質、無機塩類、赤色の血色素をもっており、これが空気中で酸化して暗褐色に変色するためである。

血液をいきなり熱いお湯につけてはならないことの理由は、主成分のたんぱく質が熱で固まって繊維に固着しておちなくなる。
たんぱく質分解酵素入り洗剤を、酵素がちゃんと働いてくれるような条件で洗えば落ちやすくなる

5)糞便

高温洗濯と漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)が効果的

2.環境からの汚れ

1)空気中のちりやほこり

綺麗だと思われる場所でも空気中には無数のちりやほこりが浮いている。
その大半は土の中の粘土質が乾燥して舞いあがったモノで、これらは非常に小さな粒子で繊維の間に侵入して取れにくい汚れとなる。
その他煤煙(すす)、排気ガスは油の膜で覆われた粒子からできている。

2)食品からの汚れ

副食物、調味料、飲料、果汁など成分としても油性のモノ、たんぱく質、でんぷん質、天然や人口の色素などからできていて、これらの混合汚れ。

3)生活物質からの汚れ

仕事場、家庭その他の活動空間において、私たちが接触するあらゆるモノが衣服や手、髪につけばそれは直ちに汚れとなる。
化粧品、糊類、医薬品、燃料用油類、泥はね等

*実際の汚れはたいていの場合混じりあっている

食品の場合はたんぱく質と脂質と糖類の混合物

煤煙や車の排気ガスに含まれる粒子は必ず油膜でおおわれている。
そのため、実際の汚れは非常に複雑となる。

脂質と固体粒子との混合汚れ

実際の汚れの中に脂質と固体粒子との混合汚れはかなり多い。

空気中に浮遊する粒子(車の排気ガス中の粒子)は油の膜で覆われている場合が多く、衣服の襟や袖口の落ちにくいよごれは、皮脂がボンド役として空気中のちりやほこりがこびりついたモノである。

繊維の種類との関係としては、油やそれと一緒についている汚れは、油になじみやすい繊維からは取れにくい。
また、表面が複雑で凸凹の多い繊維は汚れが落ちにくい。

脂質と粒子の落ち方を比較すると、油成分の方が落ちやすく、ボンド役をしていた油がとれても粒子汚れの方は繊維上に残りやすい。

脂質の種類を比較すると電気を持った有極性の脂肪酸の方が電気を持たない無極性の中性脂肪より落ちやすい。

たんぱく質汚れ

衿垢や靴下につく皮膚角質層や皮垢のように新陳代謝によるモノなど、たんぱく質汚れは全体の20~25%に及ぶ。

たんぱく質は付着したままで置くと微生物(カビ等)の栄養源となる。

たんぱく質はついてから時間が経過したり、熱がかかったり、酸とか溶剤に触れたりするとたちまち不溶性になる。 これを「タンパク質の変性」と言う。
普通に洗ったのではなかなか落ちなくなる
(パークロロエチレンというドライクリーニングに一般的に広く使われている溶剤であるが、これによるとたんぱく質汚れのついた衣服をそのままドライクリーニングに出すと非常にとれにくくなる

*たんぱく質汚れをよく溶かすアンモニア水

熱で変性した落ちにくいたんぱく質汚れを、1/5位に薄めたアンモニア水にしばらく漬け、さらにアニオン界面活性剤で洗うとよく落ちる。これを石けんで洗った場合100%近く落ちる。
これは、アンモニア水はたんぱく質をよく溶かし、その後の洗浄ではアルカリ度の一番高い石けんで洗った場合に一番効果が出る。

(洗剤と洗浄の科学 中西茂子 より引用)