毛髪の基礎知識②「毛髪の損傷」

毛髪の損傷は

外側の毛小皮から損傷する場合と

内部の毛皮質から損傷する場合があります

いずれもその原因は人為的に発生するものが多く、自然に損傷することはあまりありません

毛の損傷が起こる原因は、大きく分けて、物理的原因と化学的原因の2つです

これらの損傷によって生じる毛の変化は

1、物理的変化

1、強度・弾力性の低下
2、伸び・柔軟度の変化
3、含水率の増加
4、イオン交換能の変化

化学的変化

1、アミノ酸組成の変化
a.シスチン含量低下
b.システイン酸生成
c.混合二硫化物生成
2、ケラチンの分解溶出

形態的変化

1、毛小皮紋理の変化(剥離、脱落)
2、裂毛・断毛・枝毛発生
3、結節性裂毛の発生
4、形状の変化

としてあらわれます

1、物理的原因による毛の損傷

毛を損傷する物理的原因には、熱・摩擦・乾燥・紫外線などがあります

具体的には

・ヘアアイロン、ドライヤーの熱
・ブラシによる摩擦
・強い紫外線の照射

などです

1)熱

ヘアアイロンは毛に直接あてて高い温度でかけますので、切れ毛・断毛の事故が発生することがあります。
毛の温度と損傷の関係を調べた報告書によると、ヘアアイロンの温度を150~200℃で3秒間、損傷していない毛を挟んで強度を測定したところ

・150℃⇒ほとんど影響なし
・180℃⇒8,4%の引っ張り強度の低下
・200℃⇒24,1%の低下
・150℃で20秒間⇒12,3%の低下

アイロンの熱による毛幹部の損傷
アイロン熱による毛幹部の損傷の拡大図

ドライヤーを高温で長く使用すると、たんぱく質が熱によって変質し、毛が脆くなって強度が低下します。
毛は乾燥しすぎて枝毛、切れ毛の原因になります

2)摩擦

ブラッシングやコーミング、シャンプーによって毛は損傷することがあります。
とくにブラッシングやコーミングのやり過ぎは、毛小皮の損傷に繋がります

ブラッシングによるキューティクルの損傷

毛髪科学協会研究所が行った、ヘアブラシによる毛の摩擦試験による報告書では、バージンヘアを落ちいて試験を行ったところ

・ナイロン製のブラシ⇒約1000回で損傷
・ポリエチレン製のブラシ⇒約3000回で損傷
・猪(豚)毛のブラシ⇒約8000回で損傷

パーマ、ヘアダイあるいはブリーチの施術をした毛は、ブラッシングで毛に与える損傷が少ないとされる猪(豚)毛のブラシでも、約3000回(1日100回×30日)程度のブラッシングで毛小皮に損傷が起きたそうです

また、毛が乾燥している状態でブラッシングを行うと、毛の損傷が起きます。意味のない摩擦は控えましょう

3)季節による毛の損傷

強い日差しによる紫外線は、毛小皮の損傷やメラニン色素現象の原因になります。
とくに、海辺でのサーフィンや遊泳は、海水の塩分と紫外線によって毛が変色したり、毛が損傷してパサつきを起こします

プールでの水泳も、プールの水に含まれている塩素によって、毛が変色することがあります

2、化学的原因による毛の損傷と皮膚の障害

パーマとヘアダイは、日常的に広く行われています

パーマ用剤は、その化学的な処理によって、毛皮質にあるケラチン繊維の構造を変化させるので、毛の強度を低下させ弾力性を失わせダメージを与えます。

また、皮膚に対しては、パーマ用剤の第1剤には皮膚刺激性があります
施術を受けるお客様と施術者自身双方の皮膚に、発赤・かゆみ・痛み等を発生させることがあります

ヘアダイ剤は、多くの方がそれによってかぶれを起こすわけではないのですが、体質的にアレルギー反応を起こす方もいます

1、パーマによる損傷

第1剤のチオグリコール酸塩は、ケラチンの変性剤で溶解剤でもあり、除毛剤でも使われている位なので、正しく行われたとしても、ある程度のダメージをうけることをまぬがれません

パーマによる損傷

2、ヘアダイによる損傷

ヘアダイは、色素を酸化させながら毛皮質に浸透させて、毛の内部と外部の両方を染色します

ヘアダイによる毛の損傷には、形態的・物理的・化学的変化のいずれもが認められます。
とくに顕著なのは、毛小皮の剥離・毛皮質の露出などの形態的変化、およびシステイン酸の生成などの化学的変化です

またアルカリ性にした過酸化水素は毛皮質にダメージを与えます