そもそもアレルギーってなんでしょう?
食物アレルギー、卵アレルギー、小麦アレルギー、牛乳アレルギー・・・
花粉症から気管支喘息やアトピー性皮膚炎など、いろいろあると思いますが
なぜアレルギーが起こるのか知ってますか?
白髪染めで起こりやすい白髪染めアレルギー(ジアミンアレルギー)もれっきとしたアレルギーのひとつですし、美容師としても、白髪染めをされるお客様にしても、知っておいた方がいいですよね
それでは、すっごく参考になって読みやすかった
斎藤博久先生の著書のひとつ「アレルギーのしくみ」の中のお言葉を借りながら話を進めていきます!
カラダには細菌やウィルスなどの危険な異物を攻撃し、排除する「免疫」という防御システムが備わってますが、この免疫システムが危険でないものにまで反応し、攻撃してしまうことで起こるのが「アレルギー」です
アレルギーがなかなか改善されないのは、免疫に「二度なしの法則」があるためです
いちど敵とみなされたアレルゲンは白血球に記憶され、次に侵入してくると同じように免疫が反応します
感染症の場合、免疫反応によって同じ病気にかかるのを防いでくれますが、アレルギーの場合これがあだとなってしまいます💦
同じアレルゲンが侵入するたびに免疫が働き、同じアレルギー反応に見舞われてしまうのです・・・
ところで、白血球とか免疫細胞とかって、ひとつふたつと思ってませんか?
いまわかってるだけで・・・⇩
(*斎藤博久著”「アレルギー」のしくみ”より抜粋させていただきました)
こんなにあるんですよ
それぞれが複雑に絡み合い、それぞれの役目を果たしています
難しい仕組みは割愛させていただきますが
理美容院で最も厄介だけど最も必要な施術のひとつ「白髪染め」に関係してくるアレルギーは
Ⅳ型アレルギーです
アレルギーは4つのタイプに分けられています
Ⅰ型・・・アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、花粉症、気管支喘息など→即時型
Ⅱ型・・・重症筋無力症、悪性貧血→自己免疫疾患
Ⅲ型・・・膠原病(関節リュウマチ、全身性エリテマトーデス)など→自己免疫疾患
Ⅳ型・・・接触過敏症(かぶれ等)、アトピー性皮膚炎(遅延型)→遅延型
即時型(ごく一般)のⅠ型アレルギー、自己免疫疾患に分類されるⅡ型とⅢ型、IgE抗体が関与しない遅延型のⅣ型に分けれています
白髪染めアレルギー(ジアミンアレルギー)は遅延型であるⅣ型アレルギーといわれていますので、ここからはⅣ型アレルギーに話をしぼって進めていきますね
Ⅳ型アレルギーに関与しているのは、免疫の司令塔であるT細胞(Th1)です
Ⅰ型アレルギー(花粉症など)では、Th2(2型ヘルパーT細胞)がマクロファージや樹状細胞から得た情報をもとにB細胞に抗体を作る指示を出しますが
Ⅳ型の場合、異物に対する情報を得たTh1がサイトカインを分泌することで直接、炎症反応を起こし、¹炎症性のTh17(炎症性の1型ヘルパーT細胞)に変化します
*1 インターロイキン17(IL17)という炎症性のサイトカインを分泌して、食細胞の仲間である好中球を活性化させ、細胞に炎症を起こします
似ているような症状が出るアレルギーでも、「はたらく細胞」が違ってるんですよ
ジアミンアレルギーと同じⅣ型アレルギーによるかぶれ症状で、皆さんがよく知るであろううるしによるかぶれがあります
皮膚にうるしが付着すると、うるしの中に含まれる化学成分のひとつ、ペンタデカカテコールという化学物質が体内に侵入し、皮膚組織のタンパク質(ランゲルハンス細胞)と結合することでアレルゲンになります。炎症性Th17は、こうしたアレルゲンを攻撃します
その結果おこる炎症反応がかぶれということになります
ここで注意したいのが、分子量の小さな化学物質は白血球の対象とならないため、攻撃されることなく体内に侵入し、タンパク質と結びつくことで初めてアレルゲンになるということです
ちなみに、白髪染めに含まれている悪名高いパラフェニレンジアミンの分子量(108,14)も極めて小さい化学物質です⇩
(悪者扱いされることが多いのですが、この染料がないと希望する色にできないんです。白人系の白髪染にはなくてもいいんだけど、アジア系の髪色には必須です)
Ⅳ型アレルギーは、IgE抗体がアレルゲンにすぐに反応し、数分で症状が現れるⅠ型アレルギーに比べると、症状が現れるまで数時間を要し、しかも一日以上たってから症状が強く現れるようになります
Ⅰ型アレルギーを「即時型」、Ⅳ型アレルギーを「遅延型」と呼ぶのはそれゆえです
Ⅳ型アレルギーに関しては、クロム・ニッケルなどの金属、うるし・サクラソウなどの植物、クロム酸塩・塩化ピクリルなどの化学物質、化粧品などがアレルゲンになります
話をまとめると・・・
白髪染めアレルギーは、症状が現れるまでに数時間を要する遅延型アレルギーで、そこに関係する免疫細胞は、炎症性に変化したTh17というT細胞で、誰もが起こる可能性があるアレルギーということです
【注意】
ここで気を付けたいのが、白髪染めにはアレルギーのリスクだけではなく、一次刺激性接触皮膚炎を起こす可能性もあります
一次刺激性接触皮膚炎は、薬剤が持つ力(カラー剤に含まれるアルカリ剤や過酸化水素など)で皮膚障害が起こる症状です。カラー剤が皮膚につくとピリピリしたりヒリついたりする症状で、カラー剤がついている間だけに起こる症状で流すと収まりますが、繰り返すうちに皮膚が弱りカサブタ状に悪化します。アレルギー体質でなくとも、皮膚が弱いと起こりやすくなります
Ⅳ型アレルギー(接触性皮膚炎・接触過敏症)と一次刺激性接触皮膚炎も違いますので、混同しないようにご注意ください!
ただ、少しだけ朗報もあります
今注目を集めている「制御性T細胞(Tレグ細胞)」というものが、アレルギーの制御にかかわっているそうな・・・
今後に注目です!
そこはさておき
Ⅳ型アレルギーのひとつである白髪染めアレルギー(ジアミンアレルギー)のことが分かってくれば、美容師としてできることがいろいろあります
白髪染めアレルギーになってしまったときに多くの方が使用する、ヘナやインディゴ等を使用した草木染、パラフェニレンジアミンを使用しないノンジアミンカラー、オハグロ式カラーなどの、素晴らしい染料を利用した「ジアミンアレルギー」対処法もあるのですが
懸念材料として挙げられるのがどれも、頭皮からべったりと塗布しないと染まらないものばかりなんですよね
たとえばヘナ。もちろん悪いものではなく否定する気もありません。ただ、うるしも植物の1種で、ペンタデカカテコールという化学物質によりかぶれたりもします。ヘナに含まれ発色する成分として知られているのが⇩
です。皮膚が敏感なアトピーの方や、植物アレルギーをお持ちの方には勧めにくいものと考えています
オハグロ式カラー(ポリフェノール類と鉄塩の反応を利用)も皮膚科で勧められたりするそうですが、あくまでもジアミンアレルギーの方のための代替カラーであり、その成分でいつかぶれ症状が起こるかは誰も知りません
その他ノンジアミンカラー(定義が多数あり)についても同様に思います
なんか、気づきませんか?
これらはすべて、ジアミンアレルギーの対応であって、Ⅳ型アレルギーに対する対応ではないんですよ💦💦💦
いいですか?
Ⅳ型アレルギー(ジアミンアレルギーやうるしかぶれ、化粧品かぶれ等)は、皮膚に何らかの成分が付着することから始まる、ということを忘れないでくださいね
アレルギー性接触皮膚炎や一次刺激性接触皮膚炎を確実に回避していくためには、どれか一つの優秀なカラー剤を使用するだけでは到底足りませんし
頭皮からベタ付けするカラーは、すべてパッチテストが義務付けられています(その判断は自己によるものもしくは医師の判断が必要で、医師免許を持たない美容師が判断することはできません)
しかも、皮膚の弱い個所をねらって毛染めするごとに毎回、48時間前までにパッチテストが完了していなければならないという、大変な作業がまっています。
実際に行っているのかは何とも言えないのですが💦
あなたはそんな大変なパッチテストを毎回行っていますか??
そんな面倒が嫌だという方、Ⅳ型アレルギー対策をしたいという方は、この先の対処法が役に立ちます
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【対処法として考えられること】
ジアミンアレルギー対策をⅣ型アレルギー対策として考えていくと
一番に思い浮かぶのが「ゼロタッチ」というテクニックです
通常の白髪染めのように刷毛で塗っていくのではなく、コームを使用しながら頭皮につかないように塗るテクニックです
大事なことですよね?
頭皮にカラー剤がつかなければ、アレルギー性皮膚炎も刺激性接触皮膚炎も起こらないのですから・・・
ただし
アトピー体質の方やアレルギーをすでにお持ちの方、過敏症の方や皮膚の弱い方へ施術する場合、ゼロタッチの精度をさらに高めなければなりません
このテクニックを洗練させたものにグレスタッチというものがありますが、通常のゼロタッチテクニックをさらに向上させたもので、まずこのテクニックを駆使することが、Ⅳ型アレルギー性皮膚炎や刺激性接触皮膚炎を回避するのに必要最低限な技術です
頭皮にカラー剤がつかないように、且つ、根本ぎりぎりを狙いながら染めるときに、なくてはならないテクニックです
たとえば
コームにカラー剤を乗せるときの細かいテクニックから始まり、毛束を持つ角度だったりコームの角度だったり、カラー剤をどのように毛束に乗せていけば頭皮にカラー剤が付かないのか・・・等々、これだけではないそのテクニックは多岐にわたります・・・
そのテクニックをさらに役立たせるために重要なのが、前処理です
通常のサロン等で使用されるであろう、ワセリンやミネラルオイル等が配合された単純なプロテクト剤を塗るのではなく、皮膚の構造としくみ等を考えたとき、まず大切なのが髪と頭皮のPHを整えることが大切です
正常な皮膚は約PH4,5の時に一番整っています。一番強さを発揮できるPH数値です。この状態のときに適正な保湿を保つことができ、乾燥からくる刺激や皮膚への異物の侵入を防ぎやすくなります(皮膚の構造のしくみについては別の機会に)
もちろんこれだけでは若干心もとないことも否めません
そこで第2の前処理として、炎症を抑える成分で尚且つ、美容室でも使用することができる化粧品登録されるものにも配合できる成分が入ったクリームを頭皮に塗布していくことが、もう一つのカギになります
この2つをゼロタッチの前処理に加えることにより、すでにジアミンアレルギーを発症してしまった方やアトピーの方にも高い確率で通常の白髪染め施術ができるようになります
それともう一つ
前処理に入るかもしれませんが、使用するカラー剤にも、この成分が入ったものを染色に支障をきたさないギリギリの量で混ぜ合わせておきます
適切な前処理を行った後に、アレルギーや刺激を抑えるカラー剤をグレスタッチ(ゼロタッチの精度を高度に上げたテクニック)で塗布していく・・・
まずこのことがしっかりとできていることが重要です(使用するカラー剤のメーカー選びも重要です)
次にできる対処法として
どのようにカラー剤を流し、どのようにして残留しやすい成分を除去していくか?でしょう
たまにお客様にも問われることがあるのですが
「カラー剤を流すときに絶対カラー剤が頭皮にも付きますよね、大丈夫なんですか?」と不審に思われる方もいます
ご安心ください。大丈夫です
前途しましたが、ジアミンアレルギーはⅣ型アレルギーです
花粉症などのⅠ型アレルギーの場合、すでに抗体が出来上がっており花粉が触れるとすぐに反応してしまいますが、超重度のジアミンアレルギー(美容室に入った時点で具合が悪くなってしまうような方)を除き、Ⅳ型アレルギーは分子量が小さい化学物質がタンパク質と結びつくことによって、かぶれ症状が起こります
流すときにカラー剤がついてしまっても、その短時間ではパラフェニレンジアミン等の酸化染料が、皮膚の中のタンパク質と結びつくことができません。それと、カラー剤を流すときには染料の反応時間がほぼ終わっており、酸化重合したパラフェニレンジアミン等は髪の中にとどまるほどの大きな分子量になり、皮膚の中に侵入することも難しい状況になっています(そんな心配をされている方のために流す順序には気を配っています)
理屈上はこんな感じですが、今までの経験上(当サロン内にて)、そこで問題はでていません
ここからは、アレルギーの対処+きれいな髪を保つ対処法になります
それが、残留薬剤除去です
カラー剤に配合されている成分の中には、シャンプーだけでは取り切れない成分がいくつかあります。それが髪や頭皮に残留してしまうことによる弊害も考えることができます
カラー剤の第2剤に配合されている過酸化水素は刺激性があり、髪や頭皮に残留することによって起こりうる弊害として、髪のパサつきやドライヤー・アイロン等の熱が加わることによる髪のダメージ、頭皮に残留することによる色素幹細胞の破壊や刺激の持続などが考えられます
カラー剤の第1剤に配合されている各種アルカリ剤も刺激性があり、残留することによる髪のダメージと、アルカリ分解能が弱まった肌には刺激として残ります
これらはシャンプー剤では取り除くことができません。1~2週間で分解されるのですが、その間、上記のような弊害が起こります
これらの成分は適切な中和作業をすることにより、即座に除去することができます
(ただし、この中和剤は適切な成分と適切なPHに整えられていることが大前提として、その使い方が重要ポイントになります。それぞれの成分の特徴をつかみ、その成分の効果を最大限発揮できるような使い方をしないと、効果も半減してしまいます!)
結果、染めているのにきれいな髪になり、ゼロタッチや前処理を施した頭皮も健やかになります
ここまでの中和作業でも十分なのですが、補足としてさらに徹底的に残留薬剤除去を行う方法もあります
普段のシャンプーでは取り切れていない、毛穴に詰まる過酸化脂質やその他の汚れ成分を取り除き、髪の中に残っているかもしれないアルカリ成分を徹底的に除去し、髪と頭皮のPHバランスを最適な状態に整える・・・
【HINT】
(過酸化脂質になってしまった皮脂成分は、界面活性剤+αで、髪の中のアルカリ剤は髪の中で炭酸を発生させることで・・・)
そんな作業をすることも可能です
アトピー体質の方にも人気を博している工程です
最後に、髪のコンディションのことを考えたドライングテクニックと、髪の状態を整えるバイブレーションアイロンを使用した裏技的テクニックを駆使して、ご自分の髪が持つ本来の姿に戻していきます
ここまでがサロンでできるアレルギー対処と美髪対処になります
ただし
その後のホームケアにより状態は変わります
ホームケア剤だけでなく、どのように洗い、どのように乾かすかで結果も変わっていきます
適切なシャンプー剤やコンディショニング剤、アフターローション等を使用し、適切な手入れをすることが、ご自分ですることができる最後の対処法です
ここまでご理解できたでしょうか?
アレルギーは対処の難しい現代病です
白髪染めは美しく年を重ねるためにも必要です
美容師ができることを駆使して、少しでも多くの白髪染めをされている方々の、お力になることができれば幸いです
参考文献
Q&Aでわかる「アレルギー」のしくみ:斎藤博久著
わかりやすいアレルギー・免疫学講座:扇元敬司著